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行きかふ人も又

行きかふ人も又

インド 2

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 すごい人出のなか、ガンガー(ガンジス河)へと向かう道を歩く。
すべてのヒンドゥー教徒にとって、聖なる河ガンガーは特別。インド各地から、各国から、毎年100万の人間が、ここを訪れる。


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やっとガンガーが見えてきた! 夜に行われるヒンドゥー教の祈りの儀式プジャーを見学するため、ダシャーシュワメード・ガートに、だんだんと人が増えていく。


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広大な大地に、なにもかもを飲み込んで、悠々と流れるガンガー。
この河幅が、雨期には何キロにも膨らんで、流れはずっと早くなるという。
いまはゆったり、どちらに向かって流れがあるのか、わからないほど静かに流れている。


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対岸へ渡るボートは大賑わい。観光客よりもインドの人々が多い。屋形船みたい。
少しずつ辺りが暗くなってきて、ますます人が増え、儀式とはいえなんだかお祭りみたい。
ピンク色の綿菓子を買ってもらって喜ぶ子どもたちがいた。その様子だけ見ていると、どこの国もおんなじだなぁと思う。


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なぜかサイババ。インドではまだ根強い人気なのらしい。ニセモノのサイババさんがいっぱいいると、ガイドさんが教えてくれる。
そういえば、デリーのレストランで、隣に座っていた男性の携帯の呼び出し音がサイババ・ソングだった。


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プジャーのステージ。どの位置からでも見学できそうだったが、すぐ傍の店のテラスで飲みものを飲みながら見るのが、観光客の一般スタイルらしく、わたしたちもチャマンさんに連れられて二階のテラス席へ。
周りの店にも、日本人をはじめ外国人観光客がたくさん集まっていた。
ペプシを買うが、お高いのはしかたない。この場所を買ったようなものだもの。


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日が暮れて、いよいよ祈りの儀式がはじまる。心なしかそわそわして、どう考えても、お祭りのようなのだった。


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お香が焚かれ、あたりに独特のいい匂いが漂う。厳粛さも神聖さもないかわりに、なにかのショウのように華やかだった。
踊りと音楽が、ビンドゥー教ならでは。仏教のように、有難くなる雰囲気ではなく、気分の高揚する明るい祈りの風景。
蝋燭のいっぱい灯ったものが運ばれてきて、クライマックスへ。


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パシャパシャ写真を撮りながら見学していたこの時、たまたま隣に座っていたスペイン人カップルのカメラが目に止まった。なんと! SONYのまるっきり同じカメラではないですかー。
あちらも気がついてニッコリ。「おなじ~おなじ~」と見せやっこ。




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この日は、ホテルに帰って、夜の9時すぎに夕食。(上の写真はホテルの部屋から見えた景色)
日本人の感覚では遅いと思うけれど、インドではこの時間に晩ご飯を食べるのが当たり前。
そういえば、昨夜7時に夕食をいただいたら、レストランは私たち以外だれもいなかったっけ。
お腹がすいて、欲張って、カレーの他に、タンドゥーリー・チキンも頼んでみる。けれど・・・かたくてあまり美味しくない。(後日、別のレストランでいただいたものは美味しかった)
出される量が多いので、思った以上に早く満腹になって、食べきるのに難儀してしまった。

インドのカレーはオイリー。
数食続けただけで、胃が疲弊してくるのがわかる。
お腹を壊す話はよく耳にするけれど、それは水だけのせいではなく、油ぽいカレーと香辛料のせいでもあると思われる。味は申し分なく美味いのだけれど。


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ここもなかなかキレイ。しかし布団をまくるとシーツが汚い。きっと洗っても落ちないヨゴレなのだろう・・・・。
仕方ないから、ベッドの上に寝転がって、バスタオルをかけて、この夜、寝た。
窓の外の道は、車やら牛やら人間やらリクシャーやらが、夜中まで通る。おかげで一晩中クラクションが鳴りやまず、たびたび起されながら眠った。




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 早朝4時に起きて、昨夜プジャーを見たガートへむかう。朝日の登る前、すでに沐浴する敬虔な人々の姿。


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ボートに乗って、いざガンガーへ。願いが叶ってほんとうに感無量。ずっと感動していた。
ダシャーシュワメード・ガートからアッスィー・ガートのほうへ漕ぎだす。


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子どもたちを集めて、ヨガを教えている風景。みんな早起きね~ぇ。日本なら、ラジオ体操といったところ。


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すでに、洗濯のお仕事も始まっている。板に打ちつけて洗い、そのまま土草の上に干す。
昨夜、寝たベッドシーツも、きっとここで洗ったもの。

さすがに、ガンジス河でバタフライはしなかったけれど、ボートの縁から、ガンガーの流れに足を垂らし手をひたす。
時おり、川面にピシャリと魚が跳ねる。栄養豊富な水で育つ魚は、さぞかしデカイのだろう。釣り糸を垂れる人の姿もあった。


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マニカルニカー・ガート



たくさんのガートをとおり越し、ボートは向きを変えて、マニカルニカー・ガートへ到着した。
ここは遠藤周作さんの『深い河』でも、大切なシーンを担った場所。
遺体を焼くのに使用する薪が、あたりにたくさん積まれている。燃えているのは火葬の焔。
生と死がものすごく近い場所にある、エネルギーや気の多さに圧倒されてしまって、どきどきした。
この場所では、カメラを出すことすら禁じられているのだけれど、ただ居ることはかまわない。
もう少し時間のある旅なら、もっとずっとこの場所にいたかった、見届けたかったと、切に思った。

ここから、陸に上がり、ガートを守る人々の暮らす路地を歩いた。すごい体験だった。
狭くて汚くて、不快な匂いが漂っているとしても、ここで一生を送って、最期には薪で焼かれガンガーに流されるという人生も、ありだと思える。




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ホテルに戻り、朝食にはドーサー(豆と米の粉を練って鉄板で薄く焼いたもの)をいただいた。なかにジャガイモの煮たのが入っていておいしい! 
ダヒーというヨーグルトと一緒に食べるのがインド流。

夕方発の寝台列車まで、この日もいろいろ見てまわる。
バナーラス・ヒンドゥー大学内にあるヴィシュワナート寺院、インドの巨大な立体地図があるバーラト・マーター寺院(写真は割愛)

予定にはなかった、シルクの織物工場へも行った。
そらそらきたぞ――という感じで、「二階へきなさい」といい「どれがいい?」という。
こうやって大理石とかウールとかシルクのお高い製品を買わされるために、インドへ来たわけではないので、この後、いっさいそういう場所へは連れて行ってくれるな、とチャマンさんに念をおして、クッションカバーをひとつだけ買って工場を出る。

お昼には、レストランでターリーを。飲み物はレモン味のLimca。
どちらもとっても美味しかったけれど、そろそろブラックコーヒーが飲みたくなってくる。
インドに来てからというもの、「Black coffe」と頼むと砂糖とミルクのたっぷり入ったものが出てくる。訝しがりつつ甘んじて甘いコーヒーを飲む日々はつづく・・・・。
インドの人は苦いコーヒーを飲まないのね、きっと。


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午後からは、初めてリクシャーに乗ることができた。
とはいえ、値段の交渉は現地のドライバーさん、ジャマールさんがしてくれて、私たちは乗るだけ。無力。
目的地は、真っ赤な壁が目立つドゥルガー寺院

リクシャーワーラーさんの背中ごしに、すこしだけ目線の高くなった道路が、後ろへうしろへ流れていく。こんなに暑いのに、三輪のリクシャーを漕ぎ続けるのは、過酷な仕事だなぁ・・・・。
お客とはいえ、申し訳なくなってくるけれど、風は気持ちい。

無事、ドゥルガー寺院に到着。
ヒンドゥー教徒しか入ることのできない入口を窺っていると、なかから「出ていけ!」と怒鳴られて、そうそうに退散した。

お茶の時間には、道端で熱いチャーイを飲んだ。とても美味しいから、おかわり。
素焼きの器は素朴で、持って帰りたいと頼んだら、くれた。というか、ジャマールさんが、口をきいて買ってくれた。


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そしてついに、ヴァーラーナスィーを離れる時がきてしまった。ここからアーグラーへ、寝台列車に乗っていく。
傾きかけた太陽が、コンクリートに照り返してすごく暑いホームに、ゴミだらけの線路、牛が目の前をゆうゆうと歩いていく。
汽車がホームに入ってくるたび、し尿の匂いが立ち上り息ができず、疲れと暑さに追い打ちをかける。
離れがたい、ガンガーのある町、2日間お世話になったジャマールさん。しかし・・・・汽車が予定より1時間半以上遅れて構内に入ってくる頃には、早く寝台に横になって休むことばかり考えていた。


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インドの汽車が遅れることは、百も承知、、、だったけど、いつ来るのか、なんで遅れているのかすら分からないで灼熱のなか待つのは、過酷。
やっと汽車に乗り込んで、座る場所もないので、寝台の二階にすぐ収まって、そのまま夜ごはんも食べずに眠ってしまった。
目が覚めたら、もうみんな駅弁(カレー)を食べていて、わたしも急いで掻きこむ。

その弁当のゴミが、汽車のドアから外へ投げられる。それでいいのかインド・・・・と、この時だけは、貧しさなどとは別の怠慢が垣間みれて、怒りと悲しい気持ちがわいてきた。


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それでもとりあえず、また寝転がる。
本を読みたかったけれど、ヘッドライトが壊れていて暗くて、寝るしかできない。
列車は時おり停まりながら、そんなことは知らずに、わたしは朝までぐっすり眠っていた。




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